伊勢市にある「高柳の夜店」。その名前は聞いたことがあっても、実際に行く機会は長い間なかった。僕がこの夜店を知ったのは奥さんとの出会いがきっかけだ。それから毎年6月に開催されていることを知ったけれど、病気の影響で一度も行けないままだった。
僕の体は、両足大腿骨骨頭壊死になり、歩けなくなり、車椅子生活になったことで、外に出ることそのものを諦めかけていた。でも手術を経て少しずつ体が回復し、歩けるようになったある日、「久しぶりに行ってみよう」と思えた。そうして向かった高柳の夜店は、想像以上の熱気と人の多さだった。
商店街には、提灯が並び、通り全体が温かな光に包まれていた。屋台の明かりや立ち上る湯気が混じり合い、どこか祭りのような雰囲気だ。たくさんの人が通りを埋め尽くし、笑い声やおしゃべりの声が響いている。伊勢にこんなにも多くの人が集まり、こんなにも楽しそうにしている光景を見て、思わず胸が熱くなった。
子どもたちはゲームや屋台に夢中になり、大人たちは懐かしい雰囲気に浸りながら足を止める。たこ焼き、金魚すくい、くじ引き……見ているだけでも、どこかタイムスリップしたような感覚になる。普段は静かな高柳商店街が、この時期だけは完全に別の顔を見せる。その様子は、まるで夏祭りそのものだ。
夜店の雰囲気を写真に収めながら、ただの「夜店」ではないことを実感した。これは地域全体が一つになり、暮らしの中に溶け込んでいる伝統行事。長い歴史の中で何度も形を変えながらも、今も続いていることに驚きと感動を覚えた。
高柳の夜店とは
高柳の夜店は、伊勢の夏を象徴する伝統的なイベント。大正4年(1915年)に始まり、戦争や時代の変化を経ても、100年以上続いている。その開催期間は6月1日から7月の第1日曜日頃まで。日にちの末尾が1・6・3・8の日と毎週土曜日に開催される。
屋台やイベントで賑わう通りは、昼間とはまるで別世界。夜店で使える「お楽しみ券」という商品券があり、地元の商店やゲームコーナーで利用可能だ。過去にはお化け屋敷やラジコンレース、地域の踊りや太鼓の披露など、毎年違うイベントが盛り込まれてきた。その時代に合わせて進化し続けているのが、高柳の夜店の魅力だ。
高柳商店街について
高柳商店街は三重県伊勢市曽祢・宮町にある、東西400mほどの商店街だ。昭和11年(1936年)に三重県で初めて商業組合が組織されるなど、地域の商業の中心的存在であり続けてきた。愛称は「エスポアたかやなぎ」。その名前の由来は、かつて商店街にあった大きな柳の木に由来する。
商店街には50以上の店舗が並び、地元の人々に親しまれてきた。イベントごとには観光客も訪れ、伊勢の暮らしを感じられる場所としての魅力がある。
高柳の夜店は、ただのイベントではない。その空気感や賑わいは、どこか懐かしさを感じさせつつも、地域に生きる人々の熱気で満ちている。夜店を歩きながら、提灯の灯りや屋台の香り、笑い声が交じり合うその空間をぜひ体験してほしい。あの商店街で過ごした一夜は、まるで祭りのような特別な時間だった。次の開催が待ち遠しい。
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高柳の夜店 | 伊勢高柳商店街 高柳の夜店公式サイト
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