僕が思うに、「自分を好きになれない」、そんなあなたに観てほしい映画です。
自分の見た目が好きになれない。鏡を見るたびに溜め息が出る。人前に立つときに、どこか後ろめたさを感じてしまう。そんな風に、自分への自信を持てずにいる人は、きっと少なくないと思う。
『アイ・フィール・プリティ!人生最高のハプニング』は、そんな自己肯定感の低い女性がある“勘違い”をきっかけに、自分の人生を大きく変えていく物語だ。笑えるシーンも多く、コメディとして軽やかに進んでいくが、芯の部分には「自分を信じること」の強さと切なさがしっかりと込められている。
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「わたし、超美人」その勘違いが人生を変える
主人公レネーは、美容系企業に勤める30代の女性。見た目に強いコンプレックスを持ち、自分のことを「かわいくない」と思い込んでいる。そんな彼女の生活は、どこか縮こまったように進んでいた。
ある日、エクササイズ中に転倒し、頭を打った彼女は、目覚めた瞬間に自分が「超絶美人」に変身したと勘違いする。鏡に映る姿はまったく変わっていないのに、彼女の中の“見え方”だけが劇的に変わったのだ。
そしてその「自分は美しい」という思い込みが、彼女の行動を大きく変える。堂々と仕事に応募し、自信満々で初対面の人と話し、恋愛にも積極的に踏み込んでいく。周囲は戸惑いながらも、どこか魅了されていく。そう、自分を信じることが、人の見え方や世界の広がり方をこんなにも変えるのかと、観ていて驚かされる。
外見じゃなく、“自信”が人生を動かす
この映画がユニークなのは、見た目に関する変化が一切ないことだ。整形をするわけでもなく、ファッションが劇的に変わるわけでもない。ただ“自分をどう見ているか”だけが変わる。
だからこそ、観ていてグサリと刺さる部分もある。人から「変わってないよ」と言われても、本人の中では世界が一変している。どんなに外見を取り繕っても、自信がないと行動できない。逆に、見た目が変わらなくても、自信さえあれば世界は広がっていく。そのことを、コメディタッチの中にしっかりと描いている。
ただ、その自信が時に“過信”になってしまう瞬間もある。レネーはどこかで、自分の変化がすべて「見た目の美しさ」にあると信じてしまっていた。でも、それが崩れたとき――鏡に本来の自分の姿が戻ったとき、彼女はまた自信を失ってしまう。
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本当の魅力は、最初から彼女の中にあった
それでもレネーは、最後にもう一度立ち上がる。変身なんてしていなかった、でもそれでもいい。最初から自分の中にあった「明るさ」や「まっすぐさ」「他人を笑顔にできる力」。それを信じて、人前に立って自分の言葉で話し始める。
そのシーンは、この映画のいちばん美しい瞬間だと思う。人からどう見られるかではなく、自分が自分をどう扱うか。それが人生を変えていくんだという、静かで強いメッセージがそこにある。
渡辺直美の吹き替えが持つ説得力
日本語吹き替えでは、レネー役を渡辺直美さんが担当している。最初はちょっと“演じてる感”が強くて、映画のテンポと微妙にずれているようにも感じた。でも観ているうちに、彼女の声がレネーのキャラクターにしっくりと馴染んできた。
渡辺直美さん自身が、常に自分を楽しみながら生きている印象があって、「外見に縛られない存在」として、まさにこの役にふさわしい。吹き替えというより、彼女がレネーそのものになっていた。
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誰かの言葉より、自分の気持ちを信じてみる
この映画は、誰かに「あなたはそのままで素敵だよ」と言ってもらうための物語ではない。自分で「わたしって最高!」と思えるようになるまでの、小さな戦いの物語だ。
人と比べて落ち込んだり、自分の良さがわからなかったり。そういう時間の中で、レネーの物語は、私たちをそっと励ましてくれる。笑って、ちょっと泣いて、そして観終わったあと、きっとほんの少しだけ自分を誇らしく思えるようになる。
自信が欲しいすべての人に、ぜひ観てほしい一本。『アイ・フィール・プリティ!』は、軽やかで、明るくて、でもちゃんと心に残る映画です。