志摩市のとあるお寺で、書道家の撮影をしてきた。HP用の写真が目的だったが、その場の空気や光に触れているうちに、ただの素材撮影では終わらない、特別な時間になった。
お寺の窓を全開にして柔らかな自然光を取り込む。畳をゆっくりと照らすその光が、空間全体に静謐な雰囲気を与えていた。機材は一通り持ち込んだが、下手にライティングを作り込むのは違うと感じた。自然光だけで撮影することを決めた瞬間、光と影が作り出す独特の美しさが、目の前に広がり始めた。
墨をする音、筆が紙を走る音。その静かなリズムの中で、書道家が集中している様子は凛としていて、まるで時間が止まったような感覚だった。筆先に自然光が反射し、墨のツヤが浮かび上がる。その瞬間をシャッターに収めるたび、写真以上の何かを記録しているような気がした。
「かっこいいHPにしたい」という依頼に応えるため、他の書道家のサイトを参考にしながら、僕自身の感覚を織り交ぜた。お寺の空気感や書道家の世界観をどう表現するかを試行錯誤しながら撮った写真が、ひとつの物語のようにまとまっていく。完成したHPには、この撮影で生まれたたくさんの写真が詰まっている。
静けさと力強さが同居する書道家の姿と、それを包み込むお寺の空間。その両方を表現することができたと思う。写真を通じてこの特別な空気を少しでも感じてもらえたら嬉しい。
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他の写真はこちらで見られます。
HPはこちら:https://taisan-no-kobeya.net
書道家の一瞬一瞬の所作が、この写真の中で生き続けている。それを目にする誰かに、この空間の静かな迫力が届くといいと思う。
撮影機材について
この撮影では、Canon EF 85mm f/1.2L II USM と EF 24-70mm F2.8L II USM の2本のレンズを使い分けた。85mmの単焦点レンズは、書道家の繊細な表情や、筆を握る手元の細かな動きを丁寧に捉えるために選んだ。明るいF値のおかげで背景がふんわりと溶け込み、静けさの中に温かみのある雰囲気を作り出してくれた。
一方で、お寺の広々とした空間や、自然光が差し込む静謐な様子を捉える場面では24-70mmのズームレンズが活躍した。広角から中望遠まで対応できるこのレンズは、空間の広がりを切り取るだけでなく、シーンに合わせて柔軟にフレームを調整できるのが心強い。
それぞれのレンズが、書道家の集中した瞬間や、お寺の静かな時間を写真に映し出す手助けをしてくれた。撮影を通じて、その場の空気感が少しでも伝わる一枚になっていれば嬉しい。